
スペイン語の基本動詞「ir」は、「行く」という意味だけでなく、再帰動詞「irse」や「salir」など似た表現との違いも多く、学び始めの頃に特につまずきやすい動詞の一つです。
僕自身も独学でスペイン語を学ぶ中で、「どう使い分ければいいのか?」と悩んだ経験がありました。
この記事では、そんな経験をもとに、迷いやすいポイントを丁寧に解説しながら、活用・用法・フレーズ・慣用句まで網羅しています。
スペイン語学習者の方が「ir」をしっかり理解できるようにまとめていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
スペイン語「ir」とは?基本の意味と使い方
スペイン語の基本動詞「ir」は「行く」という意味を持つとても重要な単語で、英語の "go" に相当します。
目的地に向かうときやこれからの予定を話すときに頻繁に使われ、動詞の中でも使用頻度が高いことから、旅行や日常会話でも欠かせない存在です。
「ir」の基本の意味は「行く」
「ir」は、単純にどこかへ「行く」「向かう」という移動を表す動詞です。
- Voy al supermercado.
(私はスーパーに行きます) - ¿A dónde vas?
(どこへ行くの?)
ここで注目したいのは、前置詞「a」と一緒に使われる点です。
「a」は「〜へ」という方向を示す前置詞で、「ir」とセットでよく登場します。
- ir a la escuela(学校へ行く)
- ir a casa(家に行く)
ir + a + 行き先という形が基本です
「ir」はどんなときに使う?
「ir」は、以下のような場面で使われます。
✔ 1. 物理的に移動するとき
- Voy al trabajo.(仕事に行く)
- Van a Madrid mañana.(彼らは明日マドリードに行きます)
✔ 2. 未来の予定を表すとき(ir a + 動詞の原形)
- Voy a estudiar.(勉強するつもりです)
- Vamos a comer.(食べましょう)
✔ 3. 状態や進行の表現にも
意外に思われるかもしれませんが、「ir」は「うまくいく」「〜の状態になる」という意味でも使われます。
- Todo va bien.(すべて順調です)
- Las cosas van mejorando.(物事は良くなってきています)
「ir」は単なる「行く」だけでなく、未来・進行・状態にも使える柔軟な動詞です
「ir」の活用一覧|現在形・過去形・未来形をマスターしよう
スペイン語動詞 ir(行く) は不規則変化が多い動詞ですが、日常会話では極めて使用頻度が高いため、確実に押さえておきましょう。
直説法(Indicativo)
主語 | 現在形 | 点過去 | 線過去 | 未来形 | 条件法(過去未来) |
---|---|---|---|---|---|
yo | voy | fui | iba | iré | iría |
tú | vas | fuiste | ibas | irás | irías |
él / ella / usted | va | fue | iba | irá | iría |
nosotros/as | vamos | fuimos | íbamos | iremos | iríamos |
vosotros/as | vais | fuisteis | ibais | iréis | iríais |
ellos / ellas / ustedes | van | fueron | iban | irán | irían |
まずは、直説法の現在形を頭に叩き込んじゃいましょう
命令形(Imperativo)
主語 | 肯定命令 | 否定命令(接続法現在) |
---|---|---|
tú | ve | no vayas |
usted | vaya | no vaya |
nosotros/as | vayamos | no vayamos |
vosotros/as | id | no vayáis |
ustedes | vayan | no vayan |
接続法(Subjuntivo)※ 過去形は -ra型/-se型 を併記
主語 | 現在形 | 過去形(-ra型 / -se型) |
---|---|---|
yo | vaya | fuera / fuese |
tú | vayas | fueras / fueses |
él / ella / usted | vaya | fuera / fuese |
nosotros/as | vayamos | fuéramos / fuésemos |
vosotros/as | vayáis | fuerais / fueseis |
ellos / ellas / ustedes | vayan | fueran / fuesen |
接続法は学習が進んでからで十分です
その他の形
種類 | 活用形 |
---|---|
現在分詞 | yendo |
過去分詞 | ido |
会話でよく使う「ir」のフレーズ集
動詞 ir(行く) は、文法的な使い方だけでなく、日常会話の中で自然な表現として登場する頻出ワードです。
ここでは、よく使われる定型フレーズや会話表現をまとめて紹介します。
再帰動詞「irse(立ち去る・帰る)」のフレーズは、この次の見出しで解説します
ir a + 不定詞|直近の予定・意志を表す便利な構文
「これから〜する」「〜するつもり」の表現に最もよく使われるのがこの形です。
- Voy a estudiar español.
(スペイン語を勉強するつもりです) - Vamos a comer juntos.
(一緒に食べましょう) - ¿Vas a salir esta noche?
(今夜出かける予定?)
「iré」より近い具体的な未来のことを表現できます
ir + 前置詞で広がる「行く」のバリエーション
ir + a(〜へ行く)
- Voy a la escuela.(学校へ行きます)
- ¿A dónde vas?(どこに行くの?)
ir + en(交通手段)
- Voy en metro.(地下鉄で行きます)
- Vamos en coche.(車で行きましょう)
ir + con(誰と行く)
- Voy con mis amigos.(友達と行きます)
- ¿Vas con tu familia?(家族と行くの?)
ir + por(〜を取りに/迎えに行く)
- Voy por pan.(パンを買いに行きます)
- Voy por ti a las 6.(6時に君を迎えに行くよ)
「ir」+「a」と「en」の使い方が多いですね
¡Vamos!|もっともカジュアルで多用途な表現
「行こう!」「頑張れ!」「やろう!」など、使いどころ満載の一言。
- ¡Vamos!
(さあ行こう!がんばれ!)
スポーツの応援や、グループでの行動開始時によく使われます
状態や様子を伝える「ir」の使い方
Todo va bien / mal(すべて順調・不調)
- Todo va bien.(全てうまくいっているよ)
- Las cosas van mal últimamente.(最近うまくいっていない)
ir + 現在分詞(だんだん〜している)
- Va mejorando poco a poco.(少しずつ良くなってきている)
「進行中だけど、徐々に変化がある」ことを伝えるのに便利な構文です
「ir」は、ただの「行く」以上に、予定・移動・状態・感情の進行など多様な表現に使われます
再帰動詞「irse」の意味と使い方
スペイン語の動詞「ir」に 再帰代名詞 se をつけた形が「irse(イールセ)」です。
この動詞は「どこかへ行く」という意味ではなく「今いる場所から立ち去る」「その場を離れる」 というニュアンスを強く持つのが特徴です。
同じ「行く」と訳されることもありますが、ir とは使いどころや視点がまったく異なります。
「irse」は「その場から立ち去る」
「irse」は、ただ目的地に向かうのではなく、「今ここから離れる」ことに焦点があります。
- Ya me voy.(もう行くね/そろそろ帰るね)
- ¿Te vas?
(帰るの?/もう行くの?)
「今いる場所」から出るという意識が強く働く動詞です
ir と irse の意味の違いと使い分けのコツ
動詞 | 意味 | 強調される視点 |
---|---|---|
ir | 行く(目的地に向かう) | どこに向かうかが重要 |
irse | 立ち去る/帰る | 今ここから離れることが重要 |
- Voy a casa.(家に行く)→ 家に向かうことが目的
- Me voy a casa.(家に帰るね)→ ここから離れて家に向かう(出発点を重視)
友だちと遊んでいるときやパーティーの帰り際でよく使います
「me voy」「te vas」など再帰代名詞の使い方
再帰動詞「irse」は、主語に応じて再帰代名詞が変化します。
主語 | 再帰代名詞 + 活用 |
---|---|
yo | me voy |
tú | te vas |
él / ella / usted | se va |
nosotros/as | nos vamos |
vosotros/as | os vais |
ellos/as/ustedes | se van |
- Me voy ya.(もう行くね)
- Nos vamos pronto.(そろそろ帰ろうか)
- ¿A qué hora se van?(彼らは何時に出るの?)
再帰代名詞と間接目的語(~に)は3人称単数以外、全部同じ形です
irse の活用(現在・点過去・未来)
時制 | 活用例(yo) | 主な使い方の例 |
---|---|---|
現在形 | me voy | Me voy a casa.(家に帰る) |
点過去 | me fui | Me fui temprano.(早く帰った) |
未来形 | me iré | Me iré mañana.(明日帰るつもり) |
他の主語も、再帰代名詞 + ir の活用 で構成されます。
点過去形の「me fui」は ser/fui と同形なので注意しましょう
よく使われる「irse」のフレーズ集
以下は、日常会話で非常によく使われる「irse」関連の表現です。
ネイティブも頻繁に使う自然な表現ばかりなので、ぜひ会話に取り入れてみましょう。
- Ya me voy.(もう行きます/そろそろ帰ります)
- ¿Te vas ya?(もう帰るの?)
- Se fue hace una hora.(彼は1時間前に帰りました)
- ¿Nos vamos?(そろそろ行こうか?)
- ¿A qué hora os vais?(何時に帰る予定?)
- Se irá antes de las doce.(彼女は12時前には帰る予定です)
- ¡Vete!(出て行け!)※命令形・強い表現
その場を離れる、別れる、帰る、出発するなどの表現を、場面に応じて使い分けることで、スペイン語の自然さが一段と上がります。
本当によく使うので、積極的におぼえたい再帰動詞です
「ir」「irse」を使った慣用句・熟語
「ir」や「irse」はスペイン語会話で欠かせない動詞ですが、おぼえてすぐ使える「定型表現」「熟語」も非常に多いのが特徴です。
ここでは、すでに紹介した文法や会話表現とは別に、暗記しておくと便利なフレーズ・セット表現を一覧でまとめてご紹介します。
よく使われる「ir / irse」熟語・慣用句一覧
表現 | 意味・使い方のポイント | 例文 |
---|---|---|
irse de viaje | 旅行に出かける/旅行へ出発する | Nos vamos de viaje mañana. (明日旅行に出る) |
irse de compras | 買い物に出かける | Se fue de compras con su madre. (母と買い物に出かけた) |
ir por + 人/物 | ~を迎えに/取りに行く(目的で出発) | Voy por mis llaves. (鍵を取りに行く) |
irse la luz | (電気などが)消える → 停電する | Se fue la luz anoche. (昨夜停電した) |
ir en + 乗り物 | 交通手段を示す(en + 名詞) | Voy en autobús. (バスで行く) |
ir con + 人/物 | ~と一緒に行く/身に着けている | Va con su bolso nuevo. (新しいバッグを持って行く) |
ir de + 活動名詞 | 行動・レジャーを表す表現 | Vamos de tapas. (タパスを食べに行く) |
irse + 時間表現 | 特定のタイミングで離れる/出発する | Se irá antes de las ocho. (8時前に帰る予定) |
¡Vete! / ¡Vámonos! | 出て行け!/さあ行こう(命令・呼びかけ) | ¡Vete ahora mismo! (今すぐ出ていけ!) |
使い方のコツ
- ir + de:レジャー・活動的な動きに使う(例:ir de paseo, ir de copas)
- irse de ~:特定の場所・状況からの「離脱」を表す(帰る・出発する)
- ir por ~:目的を持って取りに/迎えに行くという意図
- irse la luz のように、主語が無生物でも使われる表現もあるので注意!
実際の会話で使える幅が格段に広がります
irと混同される動詞との使い分け
「ir」はスペイン語の基本動詞ですが、似た意味の動詞(irse, salir, venir, ser)と混同しやすいです。
ここでは、初心者がつまずきやすい4つの動詞を取り上げ、それぞれの違いを具体的な例文で整理していきます。
「vas」と「te vas」の違い|“行く”と“去る”のニュアンス差
- A:¿Vas a la fiesta esta noche? → 「どこへ行くのか」 に焦点があるため「ir」
(今夜パーティーに行くの?) - B:¿Te vas ya? → その場を去ること に焦点があるため「irse」
(もう帰るの?/もう行っちゃうの?)
特に「もう行くね」「帰るね」など、出発点を強調したいときは te vas / me voy を使うのが自然です
「ir」と「salir」の違い|目的地 vs 出発点に注目!
- A:Voy al trabajo todos los días. →「向かう先(目的地)」に意識があるため「ir」
(私は毎日仕事に行きます) - B:Salgo de casa a las 8. →「出発する場所(出発点)」に意識があるため「salir」
(8時に家を出ます)
なお、この2つは同時に使うことも可能です。
- Salgo de casa y voy al trabajo.
(家を出て、仕事に行く)
日本語ではどちらも「行く/出かける」で済ませがちですが、スペイン語では出発点と目的地を意識して使い分けることが大切!
なぜ「ir」の過去形は「fui」?「ser」との共通活用に注意
- (ir):Fui a Barcelona el año pasado.
(去年バルセロナに行きました) - (ser):Fui estudiante de medicina.
(私は医学部の学生でした)
スペイン語では、ir と ser は点過去(pretérito indefinido)の活用がまったく同じです。
人称 | 活用形 |
---|---|
yo | fui |
tú | fuiste |
él | fue |
... | ... |
違いは文脈で判断するしかありません。
- 「どこかに行った」→ ir
- 「〜であった、〜だった」→ ser
ややこしいですが、これは慣れるしかありません
「ir」と「venir」の違い|話し手の視点がカギ
- A:¿Vas a la reunión? → ir(行く):話し手から離れる動作(go)
(会議に行くの?) - B:¿Vienes a la reunión? → venir(来る):話し手のいる場所に向かう動作(come)
(会議に来るの?)
「誰の視点で話しているか」が明確な判断基準です
似た動詞の見分け方
- ir vs te vas →「向かう」か「立ち去る」か
- ir vs salir →「目的地」か「出発点」か
- ir vs ser(fui) → 活用は同じでも意味は文脈依存
- ir vs venir → 話し手の視点に注意!
「ir」をマスターして会話の幅を広げよう
スペイン語の基本動詞「ir」は、移動を表すだけでなく、さまざまな時制・再帰形・熟語・表現へと広がる重要な語彙です。
似た動詞との違いを理解し、活用のバリエーションや使い方のコツを押さえることで、表現力が一気にアップします。
迷いやすいポイントを一つずつクリアしていけば、「ir」はきっとあなたの心強い味方になります。
楽しく使いながら、実践的なスペイン語力を伸ばしていきましょう!
まとめ
- 「ir」は「行く」という意味を中心に、未来表現や目的地の表現に広く使われる基本動詞
- 活用が不規則なため、現在形・点過去・接続法などの変化を表でしっかり押さえることが大切
- 「irse」は再帰動詞で「立ち去る・出発する」というニュアンスを持ち、「ir」との使い分けが重要
- 「salir」との混同も多く、場面に応じた動詞の選択が自然なスペイン語表現には不可欠
- よく使われるフレーズや慣用句を覚えることで、会話の幅がぐっと広がる
以上です。