
スペイン語の現在完了は、「~したことがある」といった経験や体験を表現するときに使われます。
しかし、テキストで勉強していると「直近の過去も現在完了で表す」と記述されているものがあり、正確には不適当なんです。
今回は、現在完了の過去の表現における使い方を中心に解説していきます。
現在完了の過去の塩梅で悩んでいる方は、是非、最後まで読んでみて下さいね。
現在完了の基本
スペイン語の現在完了(Pretérito Perfecto Compuesto)は、「過去に起こった出来事が現在とつながりを持っている時」に使われる時制です。
日本語に訳すと「〜したことがある」「〜ところだ」などの意味になります。
・Ya he comido.(完了)
→ もう食べたよ。
・¿Has estudiado español alguna vez?(経験)
→ 君はスペイン語を勉強したことある?
このように、「過去に起こったことが今の状況に関係する」場合に完了現在を使います。
現在完了の作り方
現在完了形は、助動詞「haber」 + 動詞の過去分詞形で作ります。
haberは、主語によって he,has,ha,hemos,habéis,han となります。
過去分詞形は、語幹が変わらず語尾だけの変化です。
hablar → hablado / comer → comido / vivir → vivido
語幹 語尾 語幹 語尾 語幹 語尾
-ar 動詞なら語尾が -ado、-er/ir 動詞なら語尾が -idoという具合です。
hablar、comer、vivirを例にして見てみましょう。
現在完了形の活用
主語 | haberの活用 | -ar 動詞 | -er / -ir 動詞 |
---|---|---|---|
Yo | he | hablado | comido / vivido |
Tú | has | ||
Él/Ella/Usted | ha | ||
Nosotros/Nosotras | hemos | ||
Vosotros/Vosotras | habéis | ||
Ellos/Ellas/Ustedes | han |
Vosotrosだけアクセントが付きます!
いくつか例文を挙げます。
- He comido una manzana hace un rato.
-(わたしは)さっきリンゴを食べた。 - ¿Qué libro has leído alguna vez?
-(きみが)今までに読んだことがある本はなに? - Ha viajado a Japón una vez.
-(彼は)日本に旅行したことがある。 - Hemos propado sushi solo una vez.
-(わたしたちは)1回だけ寿司を食べたことがあるよ。 - ¿Habéis visitado Barcelona?
-(きみたちは)バルセロナを訪れたことはある? - Han comprado un coche nuevo hace poco.
-(彼らは)最近、新しい車を買った
不規則な過去分詞
過去分詞は、不規則に変化する動詞があります。
いずれも頻出する動詞であるため、優先的に頭に叩き込んでおくといいでしょう。
hacer(持つ) | hecho |
decir(言う) | dicho |
ver(見る) | visto |
escribir(書く) | escrito |
abrir(開く) | abierto |
poner(置く) | puesto |
romper(壊す) | roto |
めちゃくちゃ使います!
現在完了とほかの過去時制との違い
スペイン語の学習を進めていくと、現在完了と点過去、または過去完了との違いに疑問を持つことがあります。
僕自身も感覚でしか捉えていなかったので、ここでそれぞれの違いを言語化してみます。
現在完了と点過去形の違い
まず、押さえておきたいポイントは、現在完了と点過去は話し手の視点やニュアンスで使い分ける、ということです。
現在完了と点過去の違いをスペイン人の先生に尋ねたところ、以下のような回答をいただきました。
現在完了 | 点過去 |
【「いまここ」の時間軸を含む過去の出来事を「時間の流れの中の1つ」と捉える】 | 【「いまここ」の時間軸を含まない終わった出来事を「点」として捉える】 |
つまり、その過去の出来事が「いまここ」に影響するか否か、ということです。
いくつかの例文で見てみましょう。
・たくさん働いた
「今日たくさん働いた」→「その結果いまの自分は疲れている」
過去の出来事がいまの時間軸に影響しているため現在完了です。
He trabajado mucho hoy, así que estoy cansado.
「今日はたくさん働いた、友達と遊んだ」→「いまの自分に関係ない出来事」
過去の出来事をただの事実として捉えており、いまの時間軸に影響していないため点過去です。
Hoy trabajé mucho y luego jugué con mis amigos.
・今朝コーヒーを飲んだ
「今朝コーヒーを飲んだ」→「その結果いまの自分は欲しいと思わない」
過去の出来事がいまの時間軸に影響しているため現在完了です。
He tomado café esta mañana, así que ahora no lo necesito.
「今日はお茶ではなくコーヒーを飲んだ」→「いまの自分に関係ない出来事」
過去の出来事をただの事実として捉えており、いまの時間軸に影響していないため点過去です。
Esta mañana no tomé té, sino café.
・今月はずっと忙しかった
「この1ヶ月」→「今日以降も含んでいるため、忙しさが続く」
時間を1ヶ月という流れで見ており、その忙しさが継続することを表しています。
He estado muy ocupado este mes.
「今月はずっと忙しかった」→「忙しさが一段落した」
忙しさのピークが過ぎ、それを過去の出来事をとして捉えています。
Estuve muy ocupado este mes.
- 過去の出来事をざっくり伝えるとき-現在完了
- 明確な過去の表現があるとき「昨日、先週、先月」などは点過去が自然-点過去
重要なのは、話し手が「流れの中の出来事」としてなのか「過去の事実」として話しているのか、です。
現在完了形と過去完了形の違い
現在完了形と過去完了形は、どちらも「haber + 過去分詞」の形を取るため、混同しやすいですが明確な違いがあります。
現在完了 | 過去完了 |
【現在と繋がっている過去】 | 【過去の中の過去】 |
he / has / ha / hemos / habéis / han | había / habías / había / habíamos / habíais / habían |
例文で見てみましょう。
・本を読んだ
「今朝本を読んだ」→「"今日"がまだ終わっていない」
まだ終わっていない「今日」を軸に置いて話しているため現在完了です。
He leído un libro esta mañana.
「~する前に~していた」→「"寝る前"に"もうその本はすでに読んだ"」
特定の過去の時点より前に完了したことなので過去完了です。
Ya había leído ese libro antes de dormir.
・映画を見た
「見たことがある」→「経験がある、または今に繋がっている過去の出来事」
経験や体験、または文章の時間軸が現在に繋がっているのであれば現在完了です。
He visto esa película.
「わたしに勧める前にその映画を見ていた」→「"きみがわたしに勧める前"の出来事」
特定の過去より以前に完了している出来事なので過去完了を使います。
Ya había visto esa película antes de que me lo recomendaras.
・スペインに旅行に行った
「行ったことがある」→「経験がある、または今に繋がっている過去の出来事」
経験や体験、または文章の時間軸が現在に繋がっているのであれば現在完了です。
He viajado a España.
「~する前~していた」→「仕事をする前にスペイン旅行をしていた」
特定の過去より以前に完了している出来事なので過去完了を使います。
Había viajado a España antes de empezar a trabajar.
- 過去の出来事が現在と関係している → 現在完了
- 過去のある時点よりも前の出来事を表す → 過去完了
現在完了で知っておくと便利な豆知識
ここでは、スペイン語の現在完了でおぼえておくと役に立つ豆知識を2つ紹介します。
現在完了で一緒に使われる副詞
現在完了では、頻度や状態を表す副詞と一緒に使うことが多いです。
副詞 | 意味 | 例文 |
---|---|---|
ya | すでに、もう | Ya he comido. (もう食べたよ。) |
todavía | まだ | Todavía no he visto esa película. (私はまだその映画を見たことがない。) |
nunca | 1度も~ない | Nunca he estado en España. (僕は一度もスペインに行ったことがありません。) |
alguna vez | いままでに | ¿Has viajado a España alguna vez ?(今までにスペインに行ったことがありますか?) |
hoy | 今日 | Hoy he estudiado mucho.(今日、たくさん勉強したんだ。) |
esta semana este mes / año | 今週 今月、今年 | Este mes he leído tres libros.(今月、3冊本を読みました。) |
últinamente | 最近 | Últimamente he estado muy ocupado.(最近、とても忙しい。) |
siempre | 常に | Siempre he querido viajar a italia. (私は常にイタリアへ旅行したいと思っている。) |
siempreは、現在完了だと「以前からいまもずっと」というニュアンスになります
スペインとラテンアメリカにおける現在完了の使い方の違い
「いまここ」と時間の繋がりを表すのが現在完了ですが、スペインと中南米ではその感覚が異なります。
例えば、昼休みに友だちから「今朝なに食べた?」と聞かれた場合...
:He comido tostadas esta mañana.
:Comí tostadas esta mañana.
と、違う時制を使います。
なぜスペインと中南米で異なるのか?
これは以下の理由が要因と考えられています。
- 言語の進化と地域の影響
・スペイン語は広大な地理的範囲で使用されており、各地域で独自の言語が進化した
・中南米では、先住民族の言語や他のヨーロッパ言語の影響を受け、時制の使用にも変化が生じた - 教育認定と標準語の違い
・各国の教育制度と標準言語政策の違いにより、文法教育や言語使用の指導が異なる
・中南米の多くの国では、点過去形の使用が一般的であり、これが日常会話にも反映されている - 社会的・文化的貢献
・中南米では、歴史的背景や文化的特性により、過去の出来事を明確に認める傾向があるため、点過去が使われている
参考:中南米の地域統合の概観と今後の展望 - 松井 謙一郎
スペイン語の理由 - 上田 博人
スペイン間文化主義の分権的形成における制度的同型化とその「裏舞台」 - 上野 貴彦
ややこしいと感じやすい点ですね
現在完了は「いまここ」に繋がる時間軸で使う!
今回は、スペイン語の現在完了について解説しました。
現在完了のまとめ
- 過去の体験や経験は現在完了!
- 現在と繋がっている過去の出来事は現在完了!
- 時間軸の流れの中の1つを表すときは現在完了!
- 過去の時制は、話し手のニュアンスによって変わる!
いろんな現在完了の文章に触れて慣れると早く身につきますよ
以上です。