
スペイン語を学ぶうえで避けられない動詞の1つといえば「hacer」でしょう。
これは日常会話でも非常によく使われ、「運動をする」「天気がいい」「質問をする」など、幅広い場面で登場します。
それゆえ、使う場面だったり、意味が似たような動詞との使い分けで迷うことが多々ありますよね。
この記事では、「hacer」の意味や使い方、動詞活用や便利な日常表現まで、僕の経験を踏まえてわかりやすく丁寧に解説していきます。
スペイン語の「hacer」で悩んでいる方は、ぜひ、最後まで読んでみて下さい。
スペイン語「hacer」の基本の意味
スペイン語の基本動詞のひとつである 「hacer(アセール)」 は、日本語で言うと「する」「作る」といった意味で使われる、非常に汎用性の高い単語です。
ただし、「hacer」は場面によってさまざまな意味に変化するため、1つずつおぼえていきましょう。
hacer の主な意味と使い方
意味 | 日本語 | 例文 |
---|---|---|
基本の意味 | する・作る | Hago ejercicio.(運動します) Hice una tarta.(ケーキを作りました) |
行動・行為 | 行う・実行する | Vamos a hacer una encuesta. (調査を行いましょう) |
建設・創造 | 建てる・創作する | Han hecho un nuevo parque. (新しい公園が作られました) |
使役 | ~させる | Me hizo llorar.(私を泣かせた) |
天候 | 天気が~である | Hace calor.(暑いです) |
時間 | ~前から | Hace dos años que estudio español. (2年前からスペイン語を勉強しています) |
再帰動詞 | ~になる・~のふりをする | Se hizo médico.(医者になった) Se hace el tonto.(とぼけたふりをする) |
「hacer」は便利な万能動詞!
スペイン語学習を始めたばかりの人にとって、「hacer」をしっかり理解しておくことは非常に大切です。
- 宿題をする → hacer la tarea
- 質問をする → hacer una pregunta
- 天気を表す → hace buen tiempo
- 時間を表す → hace mucho tiempo que…
英語の “do” や “make” に近い役割を持っています
hacerの動詞活用
スペイン語の動詞「hacer」は、不規則動詞に分類されます。
時制や主語によって語幹や語尾の形が大きく変化するため、最初は少し覚えづらいかもしれませんが、よく使う形から少しずつ慣れていけば大丈夫です!
ここでは基本の活用形を時制別にまとめました。
hacer の活用一覧表
時制 | 一人称単数 | 二人称単数 | 三人称単数 | 一人称複数 | 二人称複数 | 三人称複数 |
---|---|---|---|---|---|---|
現在形 | hago | haces | hace | hacemos | hacéis | hacen |
点過去形 | hice | hiciste | hizo | hicimos | hicisteis | hicieron |
線過去形 | hacía | hacías | hacía | hacíamos | hacíais | hacían |
未来形 | haré | harás | hará | haremos | haréis | harán |
過去未来 | haría | harías | haría | haríamos | haríais | harían |
接続法現在 | haga | hagas | haga | hagamos | hagáis | hagan |
接続法過去 | hiciera | hicieras | hiciera | hiciéramos | hicierais | hicieran |
- 現在分詞:haciendo(~している)
- 過去分詞:hecho(~された、~した)
「hago」「hizo」「hice」は間違えやすいので要注意!
会話でよく使う「hacer」の使い方と例文
「hacer」は日常会話のあらゆる場面に登場します。
特に「~する」「~を作る」「~させる」 という使い方は、スペイン語を話すうえで避けて通れません。
ここでは、会話でよく使われる「hacer」の代表的な使い方を、例文とともに紹介します。
1. hacer + 名詞「〜をする・〜を作る」
「hacer」おいて、これがもっとも基本的な使い方です。
- Hago ejercicio todos los días.
→ 毎日運動しています。 - Voy a hacer la cena esta noche.
→ 今夜は夕食を作るつもりです。 - ¿Puedo hacerte una pregunta?
→ 質問してもいいですか?
名詞をあとに続けることで、自然な動作や行動を表現できます
2. hacer + a + 人 + 不定詞「人に~させる」
これは使役(〜させる)の形で、英語の “make someone do” に近いニュアンスです。
- Mi madre me hizo limpiar la cocina.
→ 母は私に台所の掃除をさせました。 - El jefe hizo trabajar a los empleados el domingo.
→ 上司は日曜日に社員を働かせた。
使役の対象(人)には a + 人、または代名詞 me/te/le などが使われます
3. hacer + que + 接続法「〜させる」
使役をより強調したり、文章的に丁寧にしたいときに使う形です。
- La película me hizo que llorara.
→ その映画は私を泣かせました。 - El profesor hizo que todos prestaran atención.
→ 先生は全員に注意を払わせました。
接続法が入るため、文法的には少し高度ですが、意味はシンプルです
4. 再帰動詞 hacerse(自分を〜にする・〜になる)
再帰動詞の形にすると、「〜になる」「〜のふりをする」などの意味になります。
- Me hice amigo de Juan.
→ フアンと友達になった。 - Se hace el dormido.
→ 寝たふりをしている。
この形もよく使われます
天気や時間の表現でも使える「hacer」
スペイン語の「hacer」は、天候や時間の表現にもよく使われる便利な動詞です。
天気の表現に使う「hacer」
スペイン語では、「今日は晴れだ」「寒い」などの天気の状態を言いたいときに、「hacer」が三人称単数(hace)で使われます。
スペイン語表現 | 日本語訳 |
---|---|
Hace calor. | 暑いです。 |
Hace frío. | 寒いです。 |
Hace buen tiempo. | 天気がいいです。 |
Hace mal tiempo. | 天気が悪いです。 |
¿Qué tiempo hace? | 天気はどう? |
無人称表現に慣れておきたいところです
時間の経過を表す「hacer」
「~してからどのくらい経つか」や「~前に何かが起こった」と言いたいときにも「hacer」が使われます。
このときも三人称単数の hace を使い、よく使うパターンは以下の2つです。
構文 | ニュアンス | 意味 |
---|---|---|
Hace + 時間 + que + 動詞(現在 or 過去) | 継続 | ~してから〇〇になる |
Hace + 時間 | 過去 | ~前に |
- Hace un año que estudio español.
→ スペイン語を勉強し始めて1年になります。
(=1年前から今も続いている) - Hace dos días que no duermo bien.
→ 2日前からよく眠れない。 - Hace tres horas llegué aquí.
→ 3時間前にここに着きました。
「que」の後に現在形を使うと「今も続いている」、過去形を使うと「今は終わっている」という違いがあります
天気・時間表現まとめ
用法 | 表現例 | 解説 |
---|---|---|
天気 | Hace frío. | 「寒い」などの無主語天気表現 |
時間(継続) | Hace un mes que trabajo aquí. | 「1か月前から今も働いている」 |
時間(過去) | Hace tres años me mudé. | 「3年前に引っ越した」 |
「hacer」は目に見えない状態や経過を表すときにも活躍する動詞です。
天気の話や過去の出来事について話すときに使いましょう
再帰動詞「hacerse」を深堀り
再帰動詞である「hacerse」は、「〜になる」「〜のふりをする」といった変化や状態の演出を表す動詞になります。
再帰動詞とは、自分自身に動作が向かうことを表す形で、英語の「become」に近いニュアンスを持つ場合もあります。
hacérseの主な意味と使い方
使い方のパターン | 意味 | 例文 |
---|---|---|
hacerse + 職業・身分 | ~になる(変化・結果) | Se hizo médico. (彼は医者になった) |
hacerse + 形容詞 | ~になる(性格・状態) | Me hice más paciente. (私は我慢強くなった) |
hacerse + 再帰代名詞 + 名詞 | ~のふりをする | Se hace el tonto. (彼はバカなふりをする) |
hacerse + 不定詞表現 | ~のように見せる・思える | Se hace difícil de entender. (理解しづらい) |
「hacerse」は意志的な変化を表すことが多い
似たような「〜になる」を表す再帰動詞に「ponerse」「convertirse」などもありますが、hacerseはとくに「本人の意志や努力によって変わった結果」を表すときに使います。
- Después de estudiar mucho, se hizo abogado.
→ 一生懸命勉強した結果、彼は弁護士になった。 - Se hizo tarde.
→ 遅くなってしまった。(=時間が経って遅くなった) - No te hagas el loco.
→ とぼけたふりをしないで。
「hacerse el/la+名詞」で「〜のふりをする」となる表現は、スペイン語圏の日常会話でもよく使われます
hacerse の使い方ポイントまとめ
おもな使い方 | 意味 | よく使われるテーマ |
---|---|---|
意志的な変化 | ~になる | 医者・先生・宗教・性格など |
状態の変化 | ~のように感じられる/なる | 難しい・遅い・簡単など |
ふりをする | ~を装う/ごまかす | バカ・無関心・眠っているなど |
再帰動詞「hacerse」を使いこなせると、自分の変化を表す言い回しや、相手への皮肉表現など、より自然なスペイン語表現ができるようになります。
ネイティブとの会話が弾みますね
よく使われる「hacer」の定番フレーズ
「hacer」は単体でも便利な動詞ですが、特定の名詞とセットで使われる定番フレーズもたくさんあります。
これらを覚えておくことで、日常会話や旅行、自己紹介などでの表現力がぐっと広がります。
フレーズ | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
hacer la tarea | 宿題をする | Tengo que hacer la tarea. (宿題をしなきゃ) |
hacer ejercicio | 運動をする | Hago ejercicio por la mañana. (朝に運動します) |
hacer la cama | ベッドを整える | ¿Hiciste la cama? (ベッド整えた?) |
hacer una pregunta | 質問をする | ¿Puedo hacerte una pregunta? (質問してもいい?) |
hacer un viaje | 旅行をする | Mis padres hicieron un viaje a España. (両親がスペイン旅行をしました) |
hacer cola | 列に並ぶ | Tuvimos que hacer cola para entrar. (入場するために並ばないといけなかった) |
hacer la maleta | 荷造りする | Voy a hacer la maleta esta noche. (今夜荷造りします) |
hacer el favor | 親切をする/お願いを聞く | ¿Me puedes hacer un favor? (お願い聞いてくれる?) |
hacer caso (a alguien) | 注意を払う/従う | No le hagas caso. (あの人の言うこと気にしないで) |
hacer el papel (de〜) | ~の役を演じる | Ella hizo el papel de madre. (彼女は母親役を演じました) |
「hacer」は動詞の代わりにもなる
スペイン語では「hacer + 名詞」で、本来なら動詞を使う場面でも「する」で代用できることが多くあります。
- hacer un viaje(= viajar)旅行する
- hacer una llamada(= llamar)電話をかける
- hacer ruido(= sonar, hacer sonidos)音を立てる
「hacer + 名詞」と「動詞だけ」の違い
とは言うものの、両者にはニュアンスの違いがあります。
「llamar」を例にあげて見てみましょう。
動詞のみ(llamar) | hacer + 名詞(hacer una llamada) | |
---|---|---|
文法的構造 | 単独の動詞 | 「hacer + 名詞」で構成される表現 |
直訳 | 電話をかける | 電話を1本する/電話という行為を行う |
ニュアンスの違い | 動作そのものに焦点がある | 一つの“まとまった行動・行為”として捉える |
使われる場面 | 日常会話/シンプルなやりとり | ビジネス・丁寧表現・計画や報告によく使われる |
初心者向け解釈 | 実際に「体を動かして何かする」イメージ | 「行為としてのまとまり・目的感」がある |
使用頻度(口語) | 非常に高い | やや控えめ(やや書き言葉・丁寧) |
llamar を使った自然な例文(行動・瞬間にフォーカス)
- ¿Ya llamaste a tu madre? → もうお母さんに電話した?
-「電話をかけたという行為そのもの」に直接フォーカス
-日常の会話でとても自然な表現で、誰にかけたかがすぐわかるのが特徴 - Voy a llamar a Juan ahora mismo. → 今すぐフアンに電話するよ。
-「いま電話をする」という行動の開始に焦点
-ラフで直接的、日常会話で頻出
hacer una llamada を使った表現(行為全体・計画性にフォーカス)
- Necesito hacer una llamada antes de salir. → 出かける前に電話を一本かけないと。
-電話という「ひとまとまりの行為」を指しており、相手はあえて特定されていない
-行動というよりタスクや予定の扱い - Hice una llamada importante durante la reunión. → 会議中に大事な電話を一本かけた。
-「電話をかけた」という事実ではなく、「重要な連絡行為」という出来事・行動単位としての電話を強調
-ややフォーマルな文脈に合う
まずは1日1フレーズ覚えるつもりで、無理なく繰り返すのがおすすめです
hacerに関するよくある質問
スペイン語の学習を始めたばかりの方や独学で進めている方の中には、「hacerって便利だけど、意外と混乱する…」と感じたことがあるかもしれません。
ここでは、hacerに関して特につまずきやすいポイントを、Q&Aのような形式で解説します。
「hacer」と「tener」「estar」の使い分けが分からない!
スペイン語学習をはじめたばかりは、「暑い」「寒い」などを表現したいときに Tengo calor や Estoy caliente を混同して使ってしまうことがあります。
天候や気温に関しては、hacer(Hace calor) を使うのが自然です。
Estoy caliente は「性的に興奮している」と受け取られることもあるので注意しましょう
「hacer」と「cometer」「realizar」はどう違う?
「hacer」は基本的にどんな行動にも使える便利な動詞ですが、ミスや罪を犯すときは cometer un error/crimen、計画的な行為や研究などは realizar un proyecto/investigación がより適切です。
細かなニュアンスの違いを理解しようとするよりも、まずはセットでおぼえるといいですよ
hacerの活用が不規則すぎて覚えられない!
「hacer」は現在形の hago、点過去の hice/hizo、未来の haré など語幹がコロコロ変わるため、スペイン語学習者はよく混乱します。
まずは自分が一番よく使いそうな形(現在・点過去・未来)だけおぼえて、慣れてきたら他の時制に広げると負担が少なくて済みます。
僕はいまだに間違えます
「hacerse」「ponerse」「volverse」の違いがあいまい…
どれも「〜になる」と訳される再帰動詞ですが、ニュアンスが微妙に異なります。
- hacerse:意志的・努力の結果(例:医者になる)
- ponerse:一時的・感情的な変化(例:悲しくなる)
- volverse:突然・急激・不可逆的な変化(例:怒りっぽくなる)
最初は「hacerse+職業」での使い方に集中するとおぼえやすいです。
使い分けは少しずつ慣れていけばオッケー
「hacer + 不定詞」と「hacer que + 接続法」の違いは?
どちらも「~させる」を意味する使役表現ですが、前者は直接的に行為をさせる場合、後者は間接的・丁寧な表現に向いています。
- Me hizo llorar.(私を泣かせた)→ 直接的
- Hizo que yo llorara.(私を泣かせた)→ 間接的・丁寧な表現
基本的に意味は大きく変わりませんが、hacer que + 接続法の方がやや丁寧でフォーマルな響きになります
「hacer」をマスターして表現力アップ!
スペイン語の「hacer」は、「~する」「~作る」だけでなく、天気、時間、使役、変化など、さまざまな場面で使われるため、表現の中心的な存在ともいえる動詞です。
ときには活用が不規則だったり、似た動詞との使い分けに迷うこともあるかもしれませんが、よく使うフレーズから少しずつ慣れていくことで、自然と使いこなせるようになります。
まずは「hacer la tarea」「hace frío」「me hizo reír」など、日常で使える短い表現から始めてみましょう。
それだけでも、自身のスペイン語はぐっと豊かになりますよ
まとめ
- 「hacer」は「する・作る」などの意味を持つ超頻出の万能動詞で、日常会話・天気・時間表現など多くの場面で使われる。
- 不規則活用が多いが、「hago」「hice」「haré」など主要な形から覚えると効率的。
- 再帰動詞「hacerse」は「~になる・~のふりをする」など意志的・心理的な変化を表すときに使われる。
- 「hacer+名詞」は動詞の代わりに行為全体を示す表現として使える(hacer una llamada = 電話する)。
- 「hacer」と似た意味を持つ動詞との使い分け(cometer・realizar・ponerseなど)も慣れていけば自然に理解できるようになる。
以上です。